The Camel Club Series/David Baldacci

1.The Camel Club

The Camel Club

The Camel Club

面白さ★★★★
シリーズ1作目。なかなか重厚な感じで話が始まって、いくつかの別々の登場人物の話が同時並行的に進んでいき、そして交わる、という話です。
全体的にうすら悲壮感もあり、練られた感じもあって、読んでいて次が気になる展開です。4分の3までは。

いよいよクライマックスかと思いきや、そこから趣があれ? あれ??  という間もなく一気に安ーい感じになり、バタバタっと終わってしまいます。この最後のところが非常に残念!昔読んだ二見書房のサスペンススリラー風味です。
それでも途中までは確実に面白いので星4つとしました。


2.The Collectors

The Collectors (Camel Club Series)

The Collectors (Camel Club Series)

面白さ★★
前作の重厚さはなくなり、前作の最後の方のサスペンススリラー風味が今回の雰囲気になります。
決して私のようにシリーズを先にまとめ買いせず、まず1作目の雰囲気を体験してみて、次が気になったら2作目に手を出すのが正解です。
今回も2つの話が同時並行で進んでいきます。
面白さ的には途中まではいいんですけど、キャメルクラブメンバーの方の話の進み方がご都合主義というか、たまたま○○に行ってみたら□□しているところに遭遇し・・・というところが多く、主人公の超人ぶりにもさらに拍車がかかり、少なくとも表紙のイメージはかけらもありませんのでご注意ください。


3.Stone Cold

Stone Cold (The Camel Club)

Stone Cold (The Camel Club)

面白さ★★
テイストとしては2作目と同じ感じ。しかも2作目がちゃんと終わっていないので、2作目を読むならこの3作目もセットで読まないとすっきりしません。
3作目において、いちおう過去の話も整理され、新事実が明かされ、もやもやも決着し、という風にはなっています。
ただどうしても展開が慌ただしくて、短い章立てでどんどん先にページをめくらせる様に書いているのでしょうが、あれもこれも詰め込んで起伏を無理やり付けた感が強いです。
こういう小説はじっくり読むのではなく、5時間くらいのまとまった時間を何回か潰すためにざくざくっと読むためにあるものですね。

No Time for Goodbye/Linwood Barclay

No Time for Goodbye: A Thriller

No Time for Goodbye: A Thriller

面白さ★★★★★
易しさ★★★★

Harlan Coben風の失踪もの。
どうしてもこの手のストーリーは序盤が地味になりがちというか、過去の悲劇を乗り越え平凡な日常を送っていたところに急な展開があって、、、という出だしになるため、読み始めがとてもスローな作品が多いと思います。
その点、No Time for Goodbyeは展開が速い!しかもダレた場面がない!連載漫画のように一区切りごとに次が気になる展開でどんどん引っ張っていきます。こういう話こそ正にページターナーというにふさわしい作品でしょう。
中盤以降、ある程度先が見えてからの展開はガチャガチャっと慌ててまとめた感がありますが、拾うべきものは拾ってきちんと終わったと思います。
ありがちなムカつく登場人物もなく、非常に楽しく読みやすい、娯楽小説とはこうあるべきだという見本のような満点の小説でした。
唯一、主人公の嫁さんがメンタル弱すぎで前半かなりイライラさせられたというか、主人公の愛情は底無しだなと感心してしまうぐらいなところが、これは作者の狙いなのかもしれないけれども、マイナスかなと思った程度です。

Derek Strange and Terry Quinn Series/George Pelecanos

1.Right As Rain
2.Hell to Pay
3.Soul Circus
4.Hard Revolution


過去に一度読んでみて難しくて挫折してこのたび再挑戦。
前回挫折したところあたりまでくると、あとは意外とスムーズに読み進むことができました。
難点としてはDennis LehaneのPatrick Kenzie-Angela Gennaro seriesと同じで、やたら登場人物が多い、会話部分が読み辛い、固有名詞がたくさん出てくるという3重苦。
特に登場人物の多さには本当にうんざりさせられました。
ストーリーも推理要素は皆無なので、そういうのが読みたい場合はこのシリーズはやめておいたほうがいいです。
大体の流れは、ヤクの売人やジャンキーたちの群像が描かれ、主人公たちの別件の探偵捜査がすこしずつそこに重なっていき、最後は全てが1点に集約されるというものです。探偵捜査の描写は丁寧ですが、基本的に一本道で、ひょっとしたらこうだったんじゃないか?いやいや遺留品からするとこうだろう、みたいな会話は全く出てきません。


1.Right As Rain
面白さ★★★
4冊の中では一番ストーリーというか話の目的がはっきりしていた印象。最初の100ページだけでも数十人の登場人物がひしめき、200ページ目になってもまだ新キャラが出てきます。


2.Hell to Pay
面白さ★★
悪者の日常をひたすら読まされる。全然面白くない。同じ悪者でももう少し愛嬌があるとか巨悪だとかせめてそういった要素があればいいのに、この本に出てくる悪者は本当にやることはせこくてクスリのことしか考えていなくて、いざとなったらみっともないし、全部読んだこの苦労はなんなんだと疲れてしまいます。
ラストはなんだか悪に報いが来たみたいなまとめしてるけど、これがアメリカ人の応報感だとしたらちょっとやばいと思う。
悪者に生活狂わされた人達は全然報われていないよね。
登場人物の多さも半端ないです。


3.Soul Circus
面白さ★★
一応出だしからして前作の続き風。これ単体で読むよりは前作を読んでからのほうがわかりやすいと思います。
またしてもヤクの売人同士の抗争劇を370ページ読まされる。370ページ好き放題やりきった悪人に残り30ページであっさり正義が下る。またしても巻き添えを食った人たちは置いてけぼり。
続きが気になる終わり方をしておいて、4作目を読むと思いきり肩すかしです。


4.Hard Revolution
面白さ★★
前3作で本当にちょっとだけ触れられていたDerek Strangeの過去が明かされます。
一応順番としては4作目だけど、外伝的な感じでした。
アメリカが人種問題で揺れに揺れた時代を織り交ぜているのですが、あまり興味がないテーマだったのもあって読むのが辛い。
曲紹介がいつもの5倍くらい多く、後半はうんざりして曲紹介のところは読み飛ばしてしまいました。
登場人物も相変わらずド底辺の小物の悪者ばかり、さんざん他人に迷惑かけるだけかけて、銃弾数発であっさり死んでしまったりする。
自分には向いていないシリーズでした。

【ネタバレ】キリスト教原理主義の恐怖! Ice/Shane Johnson

Ice

Ice

面白さ★★
易しさ★★★


表紙はアポロ12号の操縦士アラン・ビーン作画。
まだ多読初期の頃にアポロ関連というだけで買って積読状態になっていた本でした。
ようやく読む気になって読んでみたら、これがすさまじいまでのトンデモ本だったのです!


もう、このトンデモ振りを説明するにはネタバレするしかありません。
でもこの本をあえて読む人はいなさそうなので全部書いちゃいます。
ちなみに、サブタイトルの「The Greatest Truths Hide in the Darkest Shadows」というのが一体何のことを言っているのかは、読んでみるとわかります。


<あらすじ>
アポロ19号の月面探査もいよいよ完了となり、いざ帰ろうという矢先、帰還用エンジンがどうやっても点火しない。
さんざん頑張ったけど結局だめ。
で、どうせ死ぬならいっちょ月面探査車で遠くまでかっ飛ばせばいいじゃんと爆走する2人の宇宙飛行士。(月面探査は船長と操縦士の2人で行う)
船長はそんなにキリスト教を熱心に信仰していないが、操縦士は月面まで聖書を肌身離さず持ってきたくらいの信仰の篤い男。
ちょいちょい船長に向かってキリスト教の教えについて熱く語る怪しげな伏線。


そうこうしているうちに、偶然にもかつて超科学文明が築いたと思しき月面基地の廃墟に迷い込んだ2人。
人っ子一人いない基地内で見つけた超科学文明人の死体はめっちゃ身長が高い!
ここでなぜか船長だけ超科学文明世界そのものに迷い込んでしまう。(操縦士はそのまま居残り)
どうなる船長!?


森の中で謎の生き物に追われたり、妻によく似た謎の女性を助けたり、その結果謎の牢獄に捕えられたり救い出されたり、謎の巨大倉庫の外壁を塗装する作業を手伝ったり、突然謎の大津波が来てその巨大倉庫が流されていくのをなすすべもなく見つめたり。
船長は謎の大津波の衝撃で再び月面の超科学文明基地に戻ってこれた、、、
が、戻ってきた月面基地は廃墟ではなくバリバリの現役。
どうやら月面基地が使われていた時代にタイムスリップしつつ瞬間移動してきてしまったらしく、「神様、俺を何とか元の世界に戻してくれ!」と祈りまくりの船長。
もちろん操縦士とは再開できぬまま。
その間、月面基地内の指令室のモニターには、大災害によって壊滅していく超科学文明の母星が映し出されていたのだった。


その頃、船長とはぐれた操縦士(キリスト狂)は廃墟の月面基地内を探索するうちに変なスイッチに触れてしまい、死を覚悟する。
水も食料も暖房も絶たれ、すがるのはもちろん聖書。持っててよかった聖書。パラパラめくって読んではニヤリ。
神のなされることにはすべて何らかの目的があるんだよ!と自らに言い聞かせる操縦士であった。


一方、地球にいる2人の妻は、すっかり夫が死んだもんだと思って打ちひしがれている。
なにせ全世界にアポロ19号の失敗が放映されていますから。
操縦士の妻は夫に負けずこれまた敬虔なクリスチャン、船長の妻はそうでもない。
でも気付いたら船長妻はいままで滅多に行かなかった教会に足しげく通って、夫の身に奇跡が起きることを祈る。
そこへ操縦士妻が偶然やってきて、「神様のなされることにはすべて深遠なる目的があるの」とかなんとかニコニコ顔で語り合う。


で場面は変わって、船長と操縦士の2人は無事に地球に帰ってきましたー、妻達の祈りは神に通じましたー、やったね!
〜 完 〜


という話で終わります。
最後に船長の推測による種明かし。

  • 聖書によると昔の人はデカかった。
  • 聖書によると昔の人は長生きだった。長生きなら科学技術の進歩は半端ないはず。
  • つまり俺が迷い込んだあの超科学文明世界はノアの方舟の時代の地球だったんだよ!
  • てか俺が外壁を塗ってた巨大倉庫はノアの方舟だったんだよ!
  • なんで月面に基地を作るほどの科学技術を持っていた彼らがノアの方舟をわざわざ木で作ったかといえば、やっぱ神の御心だよね!木って生命の象徴みたいなもんだし。
  • あの大津波は創世記に出てくる大洪水だったんだよ!
  • 聖書に書いてあることは一字一句全部本当だったんだよ!だって俺見てきたもん!
  • え?そもそも帰還用エンジンが点火しなかったのはなんでだったのかって?そりゃあ、やっぱ神の御心だよね。だって無事に点火して普通に地球に帰還してたら、おそらく俺も嫁も神を信じず仕舞いだったろ?




というわけでサブタイトルの「The Greatest Truths Hide in the Darkest Shadows」というのは、
月に行ったら神に出会えたんだよ!いや比喩じゃなくて本物のイエス・キリストだよ!
ということを指していたのでした。
作者あとがきで、このストーリーは聖書を丸ごと一字一句信じる立場から書いたんだということが切々と語られます。
なんというか、世の中には決して分かり合えない人がいるんだなというのがよく分かる1冊でした。

扶養控除廃止の影響を住宅ローン減税ですべてチャラにすることは不可能

2010年4月29日
住宅ローン減税といえば、単純に言えば住宅ローン残高の1%を税金から差し引いてくれる減税策ですが、往々にして所得税より減税額の方が上回り、「余ってしまう・使い切れない」減税額があるようですね。


そういうケースでは、今回の扶養控除の廃止により所得税が増えるので、余っていた住宅ローン減税額を使い切ることにより、住宅ローン減税の効果を最大限活用できる、ということになりますね。


…(中略)…
年収400万円で住宅ローン残高が2,000万円の場合、10年間で57万円、住宅ローン減税額が増えることになります。1年あたり5万7,000円。1ヶ月あたり4,750円。言い換えれば、今までこの減税分を使いきれていなかったものが、扶養控除の廃止により使えるようになるわけですね。

結論から言うとこの記事は間違っているのですが、どの辺がおかしいのか実際に計算してみます。

検証

【条件】
2010年入居・ローン実行
ローン残額2,000万円
夫:収入400万円(社会保険料50万円)
妻:専業主婦
第一子:16才
第二子:10才


【結果】

  • 扶養控除の廃止がなかった場合

計算上の所得税と住民税の10年間の合計額…728,000円
適用となる住宅ローン控除の10年間の合計額…340,000円
実際に支払う所得税と住民税の10年間の合計額…388,000円

  • 扶養控除が廃止となる場合

計算上の所得税と住民税の10年間の合計額…1,155,500円
適用となる住宅ローン控除の10年間の合計額…655,000円
実際に支払う所得税と住民税の10年間の合計額…500,500円
(詳細は末尾の別表1〜3を参照)


比べてみると確かに住宅ローン控除額の減税額は34万円から65万円になっているので得したように思えます。
しかし、税金が72万円から115万円に増えているので、結果としては11万2500円の負担増です。
もちろん住宅ローン控除がなければ42万円の負担増なので住宅ローン控除はありがたいと言えなくもないですが、扶養控除廃止の影響をすべて吸収してくれるわけではありません。


ここで先ほどの記事の続きを読むと、さらに

繰り返しになりますが、これとは別に子ども手当てが支給されることになりますので、家計としては「Wでおいしい」ということになります。
気になった方はご自分の所得税額を調べてみてください。所得税額が住宅ローン減税額を上回るのであれば「住宅ローン減税を使いきれる」ということですね。
今後、使いきれる住宅ローン減税額が増えるわけですから、「もう少し住宅ローンの金額を増やそう」という動きが出てくるかもしれませんね。

というようなことが書いてあります。


なぜこの筆者が間違ったかというと、2点あります。
一つは住民税を計算から除外していること。
2009年末の時点で住民税の扶養控除も廃止とする、という方向性が打ち出されていますので、当然そのことも視野に入れなくてはいけないのに除外してしまっています。


もう一つは、記事の中で引用している大和総研の試算を誤って理解している点です。
そもそも引用元の読売新聞の記事では、

子ども手当の導入に伴い2010年度税制改正所得税の扶養控除が一部廃止される影響で、平均的な年収の世帯で住宅ローン減税の効果が増すことが、大和総研の試算でわかった。
 10年間の減税額が50万円以上拡大するケースがある。もともと子ども手当支給のための財源確保策として控除見直しが決まった経緯があるが、住宅ローンを抱える子育て世帯の一部には思わぬ恩恵となりそうだ。

と、あくまで「住宅ローン減税の効果が増す」としか書いていません。
にもかかわらず、なぜか


「効果が増す=余っている住宅ローン減税枠を使い切れる=お得!!」


というように都合よく脳内変換してしまったのです。
実際は住民税側の控除上限97,500円の壁があるため、使い切ることは難しいのですが。


この筆者は税金の話を「とかく難しい」「ややこしい」と言っています。

税金の話はとかく難しいですね。あれだけ制度が難しいのは、もちろん政治の思惑や圧力もあるのでしょうけれど、税理士・会計士といった士業の保護政策だと思うのは記者だけでしょうか。
さて、そんなややこしい税金の話題ですが、扶養控除が今年度廃止される影響で、住宅ローン減税の効果が高まるということです。

ならばちょっとは勉強してから記事を書けばいいのです。またはこんな風に自分で10年分計算して検証してみればいいのです。
それを、ロクに調べもせずになんだか分からないまま都合のいい記事を書いて、あげく「もう少し住宅ローンの金額を増やそうという動きが出てくるかもしれませんね」などと借り入れを増やしてもいいような印象を読者に与えるのはあまりにも無責任です。
「家計としてはWでおいしい」などと書いていますが、この筆者の頭がWでおかしいのです。

更新日:2011.05.18


扶養控除額の減額によって実質増税も住宅購入者にとっては住宅ローン控除がありますので増税分を取り戻せる可能性があります。


…(中略)…
平均的な年収の世帯では所得税額が住宅ローン減税分よりも少ないためにこれまで減税分を使いきれていませんでした。
しかし扶養控除廃止により増税した部分の所得税を住宅ローン控除で取り戻せる可能性がでてきたというわけです。

この記事も同様で、いくら住宅ローン控除のおかげで増税幅が減少するからといって、ローンを組むとこんなメリットがあるかも、というダシに使うのはやり過ぎです。
「可能性」とか「取り戻せることも」など言葉を選んでいるあたり、分かっててやってるんでしょうけど。


10年06月02日


税額が増えても 負担が増えないケースも
 今年から子ども手当が導入されることに伴い、来年から扶養控除が廃止され、15歳以下の子どものいる世帯は所得税や住民税(2012年度から)が増える。だが、住宅ローン控除を利用していると増税分が全額戻り、増税にならないケースがあることが、タクトコンサルティングの試算で明らかになった。


税金の負担が増えず 子ども手当がもらえる
 年収600万円の標準的なファミリーの場合、今の所得税額は10万1500円だが、扶養控除がないと17万7500円。住宅ローン控除はローン残高の1%が控除されるので、住民税からの控除分9万7500円も加えると、残高が2750万円以上なら増税分が全額戻る。「増税分がすべて戻れば、子ども手当がまるまる収入増になります」(同社・遠藤純一さん)
 子どものいる世帯には、住宅ローン控除が強い味方になりそうだ。

こんなのも実際に計算してみればすぐに結果が分かります。


【条件】
夫:収入600万円(社会保険料75万円)
妻:専業主婦
第一子:15才
第二子:10才


【結果】

  • 扶養控除の廃止がなかった場合

計算上の所得税と住民税の合計額…329,500円
適用となる住宅ローン控除の合計額…199,000円
実際に支払う所得税と住民税の合計額…130,500円

  • 扶養控除が廃止となる場合

計算上の所得税と住民税の合計額…476,500円
適用となる住宅ローン控除の合計額…275,000円
実際に支払う所得税と住民税の合計額…201,500円


結局負担増になってます。
増税分が全額戻るというのは「所得税に限ってみればその通り」というだけで、住民税分は結局負担増です。
「試算で明らかになった」とかよく言うよ、という感じです。


税金の話は素人には分からない、という世間の認識を利用して、ならばテキトーに誤魔化してもかまわないだろ、という商売をする人がいるのが不動産業界。
建材の話は素人には分からない、施工の話は素人には分からない、という具合に消費者の知らないところで何かを誤魔化しているのでは?と一般人が不動産業界に不信感を持ってしまうのは、こういうセールスのやり方に原因の一端があるんじゃないかと思います。





  • 別表1
所得税 第一子年齢 廃止前控除額 廃止後控除額 第二子年齢 廃止前控除額 廃止後控除額
2010 16才 630,000 630,000 10才 380,000 380,000
2011 17才 630,000 380,000 11才 380,000 0
2012 18才 630,000 380,000 12才 380,000 0
2013 19才 630,000 630,000 13才 380,000 0
2014 20才 630,000 630,000 14才 380,000 0
2015 21才 630,000 630,000 15才 380,000 0
2016 22才 630,000 630,000 16才 630,000 380,000
2017 23才 630,000 630,000 17才 630,000 380,000
2018 24才 380,000 380,000 18才 630,000 380,000
2019 25才 380,000 380,000 19才 630,000 630,000
  • 別表2
控除廃止前 所得税 住民税額 合計税額 住宅ローン控除額 実税額
2010年 19,500 59,500 79,000 39,000 40,000
2011年 19,500 59,500 79,000 39,000 40,000
2012年 19,500 59,500 79,000 39,000 40,000
2013年 19,500 59,500 79,000 39,000 40,000
2014年 19,500 59,500 79,000 39,000 40,000
2015年 19,500 59,500 79,000 39,000 40,000
2016年 7,000 41,000 48,000 14,000 34,000
2017年 7,000 41,000 48,000 14,000 34,000
2018年 19,500 59,500 79,000 39,000 40,000
2019年 19,500 59,500 79,000 39,000 40,000
合計 170,000 558,000 728,000 340,000 388,000

“2010年”とは所得税2010年分/住民税2011年度のこと。

  • 別表3
控除廃止後 所得税 住民税額 合計税額 住宅ローン控除額 実税額
2010年 19,500 59,500 79,000 39,000 40,000
2011年 51,000 113,500 164,500 102,000 62,500
2012年 51,000 113,500 164,500 102,000 62,500
2013年 38,500 95,000 133,500 77,000 56,500
2014年 38,500 95,000 133,500 77,000 56,500
2015年 38,500 95,000 133,500 77,000 56,500
2016年 19,500 59,500 79,000 39,000 40,000
2017年 19,500 59,500 79,000 39,000 40,000
2018年 32,000 78,000 110,000 64,000 46,000
2019年 19,500 59,500 79,000 39,000 40,000
合計 327,500 828,000 1,155,500 655,000 500,500

“2010年”とは所得税2010年分/住民税2011年度のこと。

住宅ローン控除は、自分の場合だとどうなるか計算してみることが大事

住宅ローン控除の記事を見ると、非常におおざっぱな説明しかしていないケースが多くみられます。
例えば、

どういう制度かというと、「住宅ローン組んだら所得税と住民税をちょっと返しますよ〜」という制度です。
じゃあ、どれくらい返ってくるの?
返ってくる金額は住宅ローンの年末残高の1%です。(長期優良住宅は1.2%)
年末に住宅ローンが2,000万残ってたらその1%の20万が返ってくるということです。
これが10年間続きます。
結構な額の税金を取り戻せそうですね!

こんな投げやりな説明で、住宅ローン控除はお得だからと数千万円のローンを組ませるのは決してプロじゃないです。


ただ、住宅ローン減税の仕組みが複雑なのは確かで、

景気対策として住宅ローン減税が実施されることになり、最大控除額が600万円まで引き上げられるということです。
この報道があった後、銀行や不動産会社に
「住宅ローン減税で600万円値引きされるのですか?」
という問合せが相次いだという話です。
いやいや、そんなおいしい話はないです。
(この報道がネタかもしれませんが・・・)

さすがにここまでひどくはなくても、実際にいくら減税になるか見当もつかない人は結構いそうです。


それでは実際の減税額がいくらになるのかというと、こんな感じで10年分計算してみないと分かりません。

上記表の「年間の最高減税額」や、「10年間合計の最高減税額」を見ると、とても大きい減税だと感じる人も多いでしょう。しかし、実際には、私たちが支払っている所得税や住民税(前年の所得税の課税総所得金額等の5%で9.75万円が上限)の範囲内での減税ということには注意が必要です。
ですから、まず、今までどの程度の所得税や住民税を支払ってきたかを確認することはとても重要です。そして、表にあるような、最高減税額を安易に期待して、多額の住宅ローン借入をしてしまわないように、あくまで最後まで完済できる無理のない住宅ローンをもとに物件予算を考えるようにしましょう。

住民税からの控除

住民税から控除できる額は次のようになっています。

住民税(所得割)から控除できる額
次の(1)または(2)のいずれか小さい額
(1) 前年分の所得税の課税総所得、課税退職所得及び課税山林所得の合計額の5%(限度額97,500円)
(2) 前年分の住宅ローン控除可能額のうち所得税から控除しきれなかった額

※「前年分の住宅ローン控除可能額のうち所得税から控除しきれなかった額」というのはお決まりの表現なので、その後に自分の住んでいる市町村名を入れて検索するとたいてい該当ページがHitすると思います。


この住民税からの控除というのはうっかりすると計算を間違えるかもしれません。

■(A)家
年収500万、扶養家族は妻、長男10歳、次男5歳とし、控除は基礎控除配偶者控除社会保険料控除のみとします。住民税は所得割のみとします。
・扶養控除廃止前
所得税 62,300円、 住民税144,600円、合計206,900円
・扶養控除廃止後
所得税 103,100円、住民税210,600円、合計313,700円

この家計で住宅ローン控除26万円があるとどうなるかというと、、、

・扶養控除廃止前
所得税 0円、  住民税47,100円、合計47,100円
・扶養控除廃止後
所得税 0円   住民税113,100円、合計113,100円

扶養控除廃止前の住民税に対する住宅ローン控除額を97,500円で計算してしまっています。
正しい控除額は所得税側と同額の62,300円ですので、控除後の住民税額は82,300円です。
こんな風にうっかりするとFPでも間違えるくらい面倒くさいのがこの制度です。
(もちろんプロは間違えたらダメですが)

2012年入居と2013年入居とで大差がないケースも考えられる

住宅ローン控除の対象となる借入残高は1年ごとに1,000万円ずつ減っていきます。
なので早いうちに家を買わなくちゃ!と焦る理由になりそうです。
しかし、条件次第では2012年中の入居でも2013年中の入居でも、住宅ローン控除のメリットがあまり変わらないケースが出てきます。


【条件】
2012年入居・ローン実行
ローン残額:3,000万円
1年当りローン控除対象額(一般住宅):3,000万円×1%=30万円
夫:収入500万円(社会保険料60万円)
妻:専業主婦
子:1才

  所得税 住民税
給与収入 5,000,000 5,000,000
給与所得 3,460,000 3,460,000
配偶者控除 380,000 330,000
扶養控除 0 0
社会保険料控除 600,000 600,000
基礎控除 380,000 330,000
控除合計 1,360,000 1,260,000
課税標準 2,100,000 2,200,000
調整控除   2,500
均等割額   4,000
税額 112,500 221,500

※住民税の所得割税率・均等割額は自治体によって異なる場合があります
※便宜上、所得税2012年分と住民税2013年度を並べて表示しています

  • 年税額 112,500+221,500=334,000
  • 住宅ローン控除額 112,500+97,500=210,000
  • 実質税額 334,000−210,000=124,000

※10年後の残債が2,100万円を切っていなければ、10年間住宅ローン控除額は変わらず。


【条件】
2013年入居・ローン実行
ローン残額:3,000万円
1年当りローン控除対象額(一般住宅):2,000万円×1%=20万円
夫:収入500万円(社会保険料60万円)
妻:専業主婦
子:2才

  所得税 住民税
給与収入 5,000,000 5,000,000
給与所得 3,460,000 3,460,000
配偶者控除 380,000 330,000
扶養控除 0 0
社会保険料控除 600,000 600,000
基礎控除 380,000 330,000
控除合計 1,360,000 1,260,000
課税標準 2,100,000 2,200,000
調整控除   2,500
均等割額   4,000
税額 112,500 221,500

※便宜上、所得税2012年分と住民税2013年度を並べて表示しています

  • 年税額 112,500+221,500=334,000
  • 住宅ローン控除額 112,500+87,500=200,000
  • 実質税額 334,000−200,000=134,000

※10年後の残債が2,000万円を切っていなければ、10年間住宅ローン控除額は変わらず。


2012年ではなく2013年入居だと住宅ローン控除対象残高限度額が2,000万円に減ってしまいますが、上記の条件で計算すると10年間の減税額は10万円しか変わりません。
消費税の動向は置いておくとして、少なくとも住宅ローン控除対象額が減ってしまうからというだけの理由でどうしても2011年・2012年に家を買わなくちゃいけないと焦っている方は、意外と2013年まで待っても大丈夫かもしれませんので、一度プロに試算してもらうと良いと思います。


もしあまり差がないのであれば、例えば消費税が平成25年度(2013年度)から増税と決まった場合に、2012年末までではなく2013年3月31日までの入居&ローン実行であれば増税を回避しつつほぼ満額の住宅ローン控除を享受できる可能性が出てきます。
(もっとも所得税・住民税までもが増税の気配ではあるようですが…復興財源「所得・法人増税」踏襲…額圧縮目指すYOMIURI ONLINE

住宅ローン控除をあまりあてにしすぎない

減税額は繰上返済 の原資になってはじめて大きな効果がある
と言えるのかもしれませんが、
それ以外は、"おまけ"程度で考えてイイでしょう。


これがあるから最後の買い時?、なんて変な方向に意識が行かないようにしましょう。
あくまで"おまけ"という考えと、支払った税金分(所得税だけで住民税ではない)しか返ってこないことがポイントです。

少し記事が古いので住民税の扱いの点が変わっていますが、この考え方自体はいまでも有効です。
まさしく住宅ローン控除はあくまでおまけなので、あまり過度に期待することなく結果的にちょっと得だったね位の気持ちでいるのが良いのではないでしょうか。
そのためにも試しにどれくらい得をするのかざっくりと計算してもらうといいです。
そうすれば、なんだこんなもんか〜、ということが実感できると思います。

新築一戸建てブログ・リンクまとめ

01 きっかけ
02 諸費用
03 火災保険
04 家計簿
05 土地
06 住宅ローン
07 夫婦
08 考え方
09 知識
10 間取り
11 外側
12 外構
13 玄関
14 内装
15 キッチン
16 食器棚
17 食洗機
18 IH 
19 浴室
20 洗面所
21 トイレ
22 階段
23 ドア
24 収納スペース
25 窓
26 カーテン
27 照明
28 スイッチ・コンセント
29 ベランダ
30 暖房等
31 猫仕様
32 工事
33 オプション
34 失敗談