住宅ローン控除は、自分の場合だとどうなるか計算してみることが大事

住宅ローン控除の記事を見ると、非常におおざっぱな説明しかしていないケースが多くみられます。
例えば、

どういう制度かというと、「住宅ローン組んだら所得税と住民税をちょっと返しますよ〜」という制度です。
じゃあ、どれくらい返ってくるの?
返ってくる金額は住宅ローンの年末残高の1%です。(長期優良住宅は1.2%)
年末に住宅ローンが2,000万残ってたらその1%の20万が返ってくるということです。
これが10年間続きます。
結構な額の税金を取り戻せそうですね!

こんな投げやりな説明で、住宅ローン控除はお得だからと数千万円のローンを組ませるのは決してプロじゃないです。


ただ、住宅ローン減税の仕組みが複雑なのは確かで、

景気対策として住宅ローン減税が実施されることになり、最大控除額が600万円まで引き上げられるということです。
この報道があった後、銀行や不動産会社に
「住宅ローン減税で600万円値引きされるのですか?」
という問合せが相次いだという話です。
いやいや、そんなおいしい話はないです。
(この報道がネタかもしれませんが・・・)

さすがにここまでひどくはなくても、実際にいくら減税になるか見当もつかない人は結構いそうです。


それでは実際の減税額がいくらになるのかというと、こんな感じで10年分計算してみないと分かりません。

上記表の「年間の最高減税額」や、「10年間合計の最高減税額」を見ると、とても大きい減税だと感じる人も多いでしょう。しかし、実際には、私たちが支払っている所得税や住民税(前年の所得税の課税総所得金額等の5%で9.75万円が上限)の範囲内での減税ということには注意が必要です。
ですから、まず、今までどの程度の所得税や住民税を支払ってきたかを確認することはとても重要です。そして、表にあるような、最高減税額を安易に期待して、多額の住宅ローン借入をしてしまわないように、あくまで最後まで完済できる無理のない住宅ローンをもとに物件予算を考えるようにしましょう。

住民税からの控除

住民税から控除できる額は次のようになっています。

住民税(所得割)から控除できる額
次の(1)または(2)のいずれか小さい額
(1) 前年分の所得税の課税総所得、課税退職所得及び課税山林所得の合計額の5%(限度額97,500円)
(2) 前年分の住宅ローン控除可能額のうち所得税から控除しきれなかった額

※「前年分の住宅ローン控除可能額のうち所得税から控除しきれなかった額」というのはお決まりの表現なので、その後に自分の住んでいる市町村名を入れて検索するとたいてい該当ページがHitすると思います。


この住民税からの控除というのはうっかりすると計算を間違えるかもしれません。

■(A)家
年収500万、扶養家族は妻、長男10歳、次男5歳とし、控除は基礎控除配偶者控除社会保険料控除のみとします。住民税は所得割のみとします。
・扶養控除廃止前
所得税 62,300円、 住民税144,600円、合計206,900円
・扶養控除廃止後
所得税 103,100円、住民税210,600円、合計313,700円

この家計で住宅ローン控除26万円があるとどうなるかというと、、、

・扶養控除廃止前
所得税 0円、  住民税47,100円、合計47,100円
・扶養控除廃止後
所得税 0円   住民税113,100円、合計113,100円

扶養控除廃止前の住民税に対する住宅ローン控除額を97,500円で計算してしまっています。
正しい控除額は所得税側と同額の62,300円ですので、控除後の住民税額は82,300円です。
こんな風にうっかりするとFPでも間違えるくらい面倒くさいのがこの制度です。
(もちろんプロは間違えたらダメですが)

2012年入居と2013年入居とで大差がないケースも考えられる

住宅ローン控除の対象となる借入残高は1年ごとに1,000万円ずつ減っていきます。
なので早いうちに家を買わなくちゃ!と焦る理由になりそうです。
しかし、条件次第では2012年中の入居でも2013年中の入居でも、住宅ローン控除のメリットがあまり変わらないケースが出てきます。


【条件】
2012年入居・ローン実行
ローン残額:3,000万円
1年当りローン控除対象額(一般住宅):3,000万円×1%=30万円
夫:収入500万円(社会保険料60万円)
妻:専業主婦
子:1才

  所得税 住民税
給与収入 5,000,000 5,000,000
給与所得 3,460,000 3,460,000
配偶者控除 380,000 330,000
扶養控除 0 0
社会保険料控除 600,000 600,000
基礎控除 380,000 330,000
控除合計 1,360,000 1,260,000
課税標準 2,100,000 2,200,000
調整控除   2,500
均等割額   4,000
税額 112,500 221,500

※住民税の所得割税率・均等割額は自治体によって異なる場合があります
※便宜上、所得税2012年分と住民税2013年度を並べて表示しています

  • 年税額 112,500+221,500=334,000
  • 住宅ローン控除額 112,500+97,500=210,000
  • 実質税額 334,000−210,000=124,000

※10年後の残債が2,100万円を切っていなければ、10年間住宅ローン控除額は変わらず。


【条件】
2013年入居・ローン実行
ローン残額:3,000万円
1年当りローン控除対象額(一般住宅):2,000万円×1%=20万円
夫:収入500万円(社会保険料60万円)
妻:専業主婦
子:2才

  所得税 住民税
給与収入 5,000,000 5,000,000
給与所得 3,460,000 3,460,000
配偶者控除 380,000 330,000
扶養控除 0 0
社会保険料控除 600,000 600,000
基礎控除 380,000 330,000
控除合計 1,360,000 1,260,000
課税標準 2,100,000 2,200,000
調整控除   2,500
均等割額   4,000
税額 112,500 221,500

※便宜上、所得税2012年分と住民税2013年度を並べて表示しています

  • 年税額 112,500+221,500=334,000
  • 住宅ローン控除額 112,500+87,500=200,000
  • 実質税額 334,000−200,000=134,000

※10年後の残債が2,000万円を切っていなければ、10年間住宅ローン控除額は変わらず。


2012年ではなく2013年入居だと住宅ローン控除対象残高限度額が2,000万円に減ってしまいますが、上記の条件で計算すると10年間の減税額は10万円しか変わりません。
消費税の動向は置いておくとして、少なくとも住宅ローン控除対象額が減ってしまうからというだけの理由でどうしても2011年・2012年に家を買わなくちゃいけないと焦っている方は、意外と2013年まで待っても大丈夫かもしれませんので、一度プロに試算してもらうと良いと思います。


もしあまり差がないのであれば、例えば消費税が平成25年度(2013年度)から増税と決まった場合に、2012年末までではなく2013年3月31日までの入居&ローン実行であれば増税を回避しつつほぼ満額の住宅ローン控除を享受できる可能性が出てきます。
(もっとも所得税・住民税までもが増税の気配ではあるようですが…復興財源「所得・法人増税」踏襲…額圧縮目指すYOMIURI ONLINE

住宅ローン控除をあまりあてにしすぎない

減税額は繰上返済 の原資になってはじめて大きな効果がある
と言えるのかもしれませんが、
それ以外は、"おまけ"程度で考えてイイでしょう。


これがあるから最後の買い時?、なんて変な方向に意識が行かないようにしましょう。
あくまで"おまけ"という考えと、支払った税金分(所得税だけで住民税ではない)しか返ってこないことがポイントです。

少し記事が古いので住民税の扱いの点が変わっていますが、この考え方自体はいまでも有効です。
まさしく住宅ローン控除はあくまでおまけなので、あまり過度に期待することなく結果的にちょっと得だったね位の気持ちでいるのが良いのではないでしょうか。
そのためにも試しにどれくらい得をするのかざっくりと計算してもらうといいです。
そうすれば、なんだこんなもんか〜、ということが実感できると思います。