Apollo13 読書中2

he could tell Flight to tell Capcom to tell the crew to shut the reactant valves on their two defective fuel cells.
―Jim Lovell, Apollo13, p.125


昨日のwantみたいに、tellも2パターンあって、
He would tell me that he wants to be with me. 
のように何か情報を伝える場合と、
He would tell me to just work harder. 
のように、対象となる人に何かするよう命じる場合があります。


私は受験を通して「英語は主語と動詞がはっきりしているんだ」と思っていたので、社会人になって英語をやりなおし始めてから、この2つ目のパターンにしばらくなじめませんでした。
He told me to go there.
He told me to be with her.
He told me to do the job.
とあれば、主語の“He”は何もしていなくて、実際にそこに行ったり彼女に付き添ったりその仕事をしたりする(かもしれない)のはたかだか目的語の“me”なわけです。
いわば、こんなシンプルな英文の中に「誰が何する」という組み合わせが2個も入っているのが信じられなかったのかもしれません。

You want me to tell her that Elliot was killed?
―Jim Lovell, Apollo13, p.191

このとき、エリオット・シーが事故死したことを彼女に伝えるのは“me”です。
“You”は何もしなくて、ただそうしてほしいと思っているだけ。
さらに改変して
You want me to tell her to go there?
とすれば、“You”はしてほしいだけ、“me”は命令するだけ、実際に行く(かもしれない)のは“her”です。


こういった動詞はたくさんあります。
He needed me to go there.
He forced me to go there.
He expected me to go there.
He allowed me to go there.
He helped me go there.
いずれも“He”はいろいろしてるようですが、実際にそこに行くのは“me”です。


で、上の最後の例で出てくるhelpは後ろの“go”が原型になっていて、知らないと面食らいます。
そして、この系統の動詞のあまりの人任せぶり(?)にいったん慣れてしまうと、
He made me to go there.
He had me to go there.
He got me to go there.
He let me go there.
なんていう受験の常連も、実はそんな大げさなもんじゃないんじゃないかと素直に思えます。


そんでもって冒頭の例に戻るわけですが、

he could tell Flight to tell Capcom to tell the crew to shut the reactant valves on their two defective fuel cells.
―Jim Lovell, Apollo13, p.125

いろんな「誰が何する」が組み込まれているけれども、結局のところ反応弁を閉じるのは乗組員。
なんとも人を食ったような見た目の文章ですが、tellの繰り返しで指示の伝達経路を辿っていくことができます。
こういう書き方で読者の視点を映像のようにスーっとずらしていくのが英語の面白いところです。


繰り返しという点では、
I kicked my legs trying to let him let me loose. 
みたいなlet×2のパターンも洋書で何回か見たことがあります。


いずれにしても、この手の動詞は誰が何するか初見で理解できなくて混乱しやすいです。
文法も大事ですが、慣れでカバーすることも大事という話でした。