Day by Day Armageddon/J. L. Bourne

Day by Day Armageddon: Origin to Exile

Day by Day Armageddon: Origin to Exile

面白さ★★★★★


これこれ!こういうのを待ってました!
ゾンビ物、主人公視点、日記調、現代文明の今ある形が終わっていく過程、広大なアメリカ本土の放浪、文明の残骸が散らばった荒廃地、生き延びた人間の狂気(極力間接的に描かれるのみ)、変種ゾンビの存在、などなど、読みたい設定が一つに詰まっております。


どうしても日記形式のところに注目が行きがちですが、特筆すべきはストーリーの語りの巧さです。
普通はゾンビ物って主人公がピンチにならないと面白くないのですが、主人公をサバイバル技術に長けた人物にしようとするとなかなか何度もピンチに陥りません。
かといって無理やりストーリーを盛り上げようとしてピンチになる場面を何度も作ってしまうと、「そもそもなんでそんな危険なとこに行くんだよ、おとなしくしとけよ」と思いはじめてしまい、バカな主人公に感情移入できなくなってしまいます(ドラマシリーズのウォーキングデッドがこのパターン)。
この意味で、本作では他人を助けなきゃいけない状況が納得のいく形で語られるので、主人公ピンチ⇒安全地帯確保、という黄金基本パターンが何度も味わえるのです。


また、世界終末ものは荒廃した世界の様子をいかに描写するかが肝ですが、凡百の作品だと描写したい設定はたくさんあってもその提示の仕方がへたくそで、設定を書くためにストーリーを作るみたいなところがあったり、逆にせっかくの設定を描ききれず消化不良になったりしがちです。
この点においても、本作では手に汗握るストーリーを語りつつ荒廃した元アメリカ合衆国の様子も十分に描くという離れ業をやってのけています。
女性キャラの扱いがひどいとかいろいろ批判もあるでしょうが、グーグルマップで地名を追いながら読むと非常に味わい深い作品です。



なお、このシリーズは1.Day by Day Armageddon、2.Beyond Exile、3.Shattered Hourglass、の3部構成となっています。
作者が日記形式に限界を感じたのか3作目だけ3人称視点で描かれており、3作目の評価だけかなり低いです。
また、1作目&2作目のみをセットにしたお得な「Origin to Exile」が発売されています。
私はこれを買ったので2作目までしか読んでおりません。
1作目で主人公ピンチ⇒安全地帯確保を存分に堪能。2作目は主人公達がやらかしていきなりピンチになるところから始まり、話が壮大になっていくところで終わります。