Newsflesh trilogy/Mira Grant(Seanan McGuire)

1.Feed

Feed (The Newsflesh Trilogy)

Feed (The Newsflesh Trilogy)

面白さ★★★
シリーズ3作すべてヒューゴー賞ノミネート、しかもゾンビ物、それもただのゾンビ物ではなく設定がひねってあるらしい、ということで期待して読みました。
いざ読んでみるとまず、ほとんどゾンビが出てきません。出てきても全然怖くない。設定としてゾンビの存在が当たり前の世界ということになっているのでそんなもんなのかもしれませんが、なんだか肩透かしを食らった気分。というか期待してたゾンビってこれじゃない!登場人物達もゾンビを怖がるのではなく、ゾンビウイルスを超怖がっている感じです。
そして、政治とブログ(既存のメディアの権威は地に落ちていて、代わりにブロガーが力を持っているという設定)という新機軸のところに関しては、特段面白いわけでもなくいまいち説得力がないせいもあって話そのものを邪魔しています。
さらにキャラクター設定について非常に難があります。みな紋切り型で、金持ち設定といえばこれ、神経質設定といえばこれ、○○に長けている設定といえばこれ、というパターンの一点張りです。そしてみな常に気の利いた(つもりの)セリフを混ぜないと会話一つできない有様。
この小説はジュブナイルものなんだと割り切って読むのが正しかったのです。



さて、この小説は何と言っても あ の シーン抜きには語れないと思います。
あのシーンが非常に良かったので、数多のマイナスを打ち消して星3つとしています。


2.Deadline

Deadline (The Newsflesh Trilogy)

Deadline (The Newsflesh Trilogy)

面白さ★
2作目になるともはやゾンビなんて出てきません。やっと出てきたと思ったら養蜂場の蜂みたいに人間が道具としてゾンビを活用。スイッチを押すとゾンビが出てくるというステキなことになっています。比喩ではなく本当に文字通りスイッチを押すとゾンビが出てくるのです。


ストーリーとしては前作の衝撃シーンにもう一ひねり、のところはOK。ただ、最後にさらにもう一ひねりしようとして盛大に失敗。


あとは会話の一つ一つ、設定の一つ一つ、設定の見せ方一つ一つがどれも見事に陳腐。とにかく陳腐。これにつきます。
むしろ陳腐な場面の見せ方を体験するために読むことをお勧めするくらい陳腐。
例えば主人公チームにとんだ来客があって、この来客が何か(この世界的には非常識だが読者には普通に思えること)を言うと、話を聞いている主人公たちの作業がピタッと止まる(本当に文字通りキーボードを打つ手とかがピタッと止まる。そして後ろのサブキャラとかがゆっくりと振り向いて信じられない物を見る目つきで来客を睨む)。来客「(何か変なことを言った?)」と戸惑う。主人公「○○は□□だからダメに決まってる!当たり前でしょうが!」。来客「でも、△△だと思ったから・・・」(以下ループ)、という表現方法で、「読者には普通に思えるがこの世界的には非常識なこと=世界観」を紹介してくれるのです。そして世界観の表現方法はこれしかありません。途中で出てくる“はぐれ科学者軍団”とのやりとりも清々しいくらいに上記の陳腐な場面だけで進んでいきます。


3.Blackout

Blackout (The Newsflesh Trilogy)

Blackout (The Newsflesh Trilogy)

面白さ★
特に何ということもなく、前作同様の陳腐なやり取りを経て話がまとまっていきます。
誰かさんの設定に関して一つだけ驚きがあって、シリーズ3作分引っ張ってきた溜めもあるのでこれはこれでいいのですが、ストーリーで驚かすのではなくあくまで設定で驚かしただけにとどまります。
この作者はストーリーに関しては0点、設定を作ることは大好きですが設定そのものが陳腐なうえに設定を読者へ見せる見せ方がへたくそで0点、主人公達の気の利いた(つもりの)軽妙な(つもりの)やりとりも0点、何も良いことはありません。なぜに大手の賞に3部作が3部ともノミネートされたのか、まったく謎です。アマゾンの★4つ5つの評価とかもまったくもって謎です。