英文を読むということ

前回、英語力は「知ってるか知らないか」、「知ってることがすぐに使えるか」ということに行き着くと書きました。
これを具体的に「英文を読むこと」に当てはめると、次のような流れになります。

(1)知らない表現に出くわす
(2)必要ならば、その表現を調べる
(3)必要ならば、その表現を覚える
(4)覚えている表現の意味が見た瞬間に分かるようにする


(1)知らない表現に出くわす
洋書や新聞など英文を読むと知らない英語表現(単語・熟語など)がたくさん出てきます。単語帳が知らない英語表現を網羅的に知る方法なのに対して、洋書などの英文を読むことは個別的・逐次的に知る方法といえます。


(2)必要ならば、その表現を調べる
知らない表現が出てきたら意味を調べます。ここでどこまで調べるかというさじ加減がくせものです。
いちいち未知語を全部調べていたら読めるものも読めません。かといって未知語をひたすら飛ばして読んだら読めるかというとそうとも限りません。
英文読み始めの頃は、調べる必要があるかどうかの適度な見極めが出来ないのでかたっぱしから未知語を調べていって結局途中で挫折したり、逆に調べないで飛ばし続けたためにストーリーを見失う可能性が出てきます。
どこまで調べたらよいか、どこまで調べても挫折しないかという度合いは、それぞれの英語力・目標とする英語力・読む英文のレベル・やる気・内容が面白いかどうかなどさまざまな要因に左右されます。


(3)必要ならば、その表現を覚える
知らない表現を調べたら覚えます。しかし人間の記憶量には限界がありますから、なんでもかんでも全部覚えることは出来ません。
調べた単語・熟語を全部覚えようとして単語帳を自作しかけて途中で断念する例は良くあります。
どこまで覚えたらいいかというこの「必要ならば」の範囲も、各自の目標に応じて変わってきます。


(4)覚えている表現の意味が見た瞬間に分かるようにする
単語や熟語など英語表現は単に覚えただけではダメで、いずれは見た瞬間にすぐに意味が分かるようにならないと少なくとも受信能力としては使い物になりません。このためには何度も繰り返し文章中で出会って記憶を強化し、その表現に対する瞬発力をつける必要があります。


このようにして知っている表現の量を増やし、さらにその表現を見てすぐ理解できるようにすれば、結果として英文がスムーズに読めるようになります。

読む英文のレベルによる違い

自分のレベルに合った英文(語彙制限本など)を読んだ場合、(1)〜(3)の作業が減りますので、(4)の「既に知っている表現の意味を見た瞬間に分かるようにする」練習に集中できます。こうして、簡単でよく出てくる基本的な表現から理解していきそれに対する瞬発力をつけるのです。


一方、いきなり自分のレベル以上の英文(新聞や小説など)を読んだ場合、(1)〜(3)の作業が絶えず必要になります。
どうしても読みたい内容のものであれば、飛ばし読みはもったいないと思ったり調べないと分からない細部まで知りたいと思うので辞書を引くのは苦になりません。そういう時は好きなように調べて読むことができます。
もちろん辞書を引くのももどかしくて速く読みたいから、飛ばし読みでどんどん読み進んでいくことも可能です。

しかし、どちらかというと勉強として読んでいるという場合は、思い切って(1)〜(3)の作業は飛ばします。すなわち分からない表現でも辞書を引かないということです。なぜなら一度にいろんなことをやろうとすると挫折しやすいからです。目的をひとつに絞って、分からないところは飛ばしてでも話の筋を追うことに集中してひたすら読み進めるほうがいいのです。
ただし、そうすると分かるところだけをつぎはぎで繋いで読むことになるので、あまりに難しすぎる内容だと挫折する可能性は高くなります。

また、ある程度英文に慣れてきて分からないところを飛ばしながらでも気にせずストーリーが追えるようになってきたら、そろそろ本格的に辞書を引いて分からないところを調べていく余裕も出てくるでしょう。

英文を読むには、最初はこれだけの負荷がかかりますので、いきなり完璧を目指して詰め込みすぎないのが挫折しないコツです。