Into That Silent Sea/Francis French, Colin Burgess

Into That Silent Sea: Trailblazers of the Space Era, 1961-1965 (Outward Odyssey: a People's History of Space)

Into That Silent Sea: Trailblazers of the Space Era, 1961-1965 (Outward Odyssey: a People's History of Space)

  • 作者: Francis French,Colin Burgess,Paul Haney
  • 出版社/メーカー: Univ of Nebraska Pr
  • 発売日: 2007/04/23
  • メディア: ハードカバー
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面白さ★★★★
易しさ★★★

ガガーリンの有人宇宙飛行からマーキュリー7、そしてアレクセイ・レオノフの宇宙遊泳まで、米ソの宇宙開発競争がどのようにすすんでいったのかを再構成した1冊。


この手の本は、知っているエピソードがたくさん出てきて食傷気味になってしまうきらいがありますが、幸いにも本書は新しい裏話が多く含まれており、過去の自伝などからの引用をうまく使って筋の通った一つのストーリーを作り上げています。
また、ソ連のやってのけた「女性初の宇宙飛行士」「3人同時打ち上げ」「初の宇宙遊泳」などが単なるプロパガンダにすぎず、むしろロケット開発の技術的な進化を妨げた要因となっていたと指摘したのは面白いところです。


一方で、長年議論があるトピックについて、あっさりと一方的に肩入れするのはどうなのかなと思うところもありました。
例えばグリソムのハッチ爆破事件とカーペンターの燃料浪費フライトについては、技術的な検証もないまま周囲の「あいつはそんなことする奴じゃないよ」という意見だけで擁護するにとどまっています。
“以前から議論のある”フライトと描写しているからには、その議論を双方の立場から浮き彫りにするかと思いきや、そうせずに済ましてしまっているのでかなり肩透かしを食らいました。


同様にマーキュリー13についても、当時女性宇宙飛行士が誕生しなかったのはNASAのせいじゃない、女にはジェット戦闘機なんて操縦させないと考えていた空軍と、詐欺的な博士、そして厚かましくも無茶な要求をした女性パイロット自身が悪いのだ、という論調に終始しており、読むに値しない章となっています。


また、図版が少ないのと、毎回人物紹介で幼少期から振り返って軍の略歴を羅列する形なのも惜しいところです。


ともあれ、全体としてはアメリカ側のストーリーに偏ることなく、大きな流れが理解できる構成になっています。
米アマゾンの評価は高すぎると思いましたが、読んで損はない内容です。