The Quiet Game/Greg Iles

The Quiet Game (Penn Cage)

The Quiet Game (Penn Cage)

面白さ★★★
易しさ★★★

連続殺人鬼を死刑にし、なんとか遺族の無念を晴らすことができた検察官の主人公。しかし、この凶悪犯の兄弟が復讐のために主人公と彼の家族に忍び寄っていたのだった…。

というようなストーリーだとばっかり思っていたのですが、全然違いました。


この本は、美人にとにかくモテまくる主人公が地元で密かに進行する陰謀を暴くためにB級アクションにも果敢に挑戦するなんでもありの作品に仕上がっています。
そして、相変わらず登場人物の会話は状況関係なく“Message perceived.”だの“Point taken.”だの言い合う疲れるやつです。
後半のミスリードもこれまたいつもの机上の空論VS机上の空論返し。たくさんの「仮にAがBだったならばCがDしただろうことは想像に難くない」を積み上げていって、そのくせクライマックスで全部壊したりする技法もいかんなく発揮されています。読者は置いてけぼりです。

さらに、主人公が作家な設定、死んだ奥さんサラ、一人娘アニー、そして死刑囚、この辺は全く要らなかったのでは?とさえ思えてくる超展開。
USアマゾンの評価がなぜあんなにも高いのかまったくもって分からないのですが、大仰な歴史的陰謀がテーマなのにアクションの見せ場が多くて退屈しないのが理由かもしれません。


というか、舞台になっているミシシッピ州Natchezは毎回毎回たくさんの死人を出して、どんだけ治安が悪いんだっていう話です。
そもそもベストセラー小説の舞台になるなんて普通は自治体にしてみれば嬉しいはずなのに、ここまで政情不安定かつモラルの荒廃したような事件ばかり起きる町として描かれると複雑な気持ちにならないんでしょうか。それともゴジラにおらが街のシンボルをぜひ壊してほしいという心境と同じところまで来ているのでしょうか。
このシリーズを読んだ限りでは、作者が本当に郷土愛からNatchezを舞台にしているのかすら怪しいのですが。


とにかく、いろんな意味で本書がこれぞGreg Ilesという作品に仕上がっているのは間違いないところです。