Up Country/Nelson Demille
- 作者: Nelson DeMille
- 出版社/メーカー: Grand Central Publishing
- 発売日: 2003/04/01
- メディア: マスマーケット
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易しさ★★★
『The General's Daughter』の主人公が極秘の任務でベトナムへ赴く。今度の捜査はベトナム戦争中に起きた米兵同士の殺人事件だ。しかし、そこには決して触れてはならない真実があった…。
続編のようでいて続編ではない、これはこれで単独で読んでもいい位独立した話です。前作では軽く爽やかな感じすらした主人公ですが、今回はかつて従軍したベトナムへの再訪ということもあって少し暗く抑制された人物になっています。
得意の皮肉も宿敵ベトナム官憲相手にしか発揮されないのでちょっと残念。てかベトナムどんな扱いだよ、と思わなくもない全体主義国家ぶりは確実に『The Charm School』を引きずっています。
現地に住むアメリカ人女性を伴なって北へ北へと隠密行動して行くうちに、戦時中の思い出の場所や戦場を回る聖地巡礼の旅にもなっていきます。というよりそっちがメインです。
作者自身、ベトナム従軍から30年を経てこの地を再訪した経験から筆をとったということもあり、当時の回想シーンと現在の兵どもが夢の跡っぷりとを対比していくストーリーなのです。当時の記憶を蘇らせる主人公と、あの戦争の経験がない現在を代表する現地ガイドとの対比がそこに重ねられています。
肝心の謎解きはまあそんなもんかなという感じ。陰謀ものとして読んでもちょっと微妙かもしれませんが、そもそも思い出めぐりがメインなんでそこに興味がないならパス。逆にデミルファンならばこれだけ長い話でも読んでみて損はないのではないかと思います。